宮古島農業のために アロエベラ発展のために
コーラルベジタブルの仲宗根さん
自身でアロエベラ畑も運営している
アロエベラを含む島野菜を栽培する宮古島農業の発展を担って創業したコーラルベジタブル。そのコーラルベジタブルと契約している農家の方々の相談、指導など、会社と現場のパイプ役となっているのは、自身がコーラルベジタブルに勤めている仲宗根さんです。
仲宗根さんは、高校を卒業後、宮崎県の農業大学に入学し、卒業後、数年他の会社に就職。その後宮古島に戻り、宮古島下地農協の第三セクターとしてコーラルベジタブルが創業された当初からその役割の一端を担っています。
アロエベラの栽培について
まず、アロエベラ栽培の流れについて教えてくださいと、仲宗根さんにたずねてみました。
親株から芽出た子株
まず、ある程度育ったアロエベラの株から、小苗が出てきますので、その小苗を他の場所に移し、1年ぐらい育てます。
元のアロエベラの親株も端から小苗が出てくると、小苗がすごい勢いで生長する反面、親株の生長が鈍くなるので、できるだけ早く小苗を抜き取り植え替えることが重要です。
そして、充分育った小苗を畝(うね〜作物を植えるために長く続けて盛られた土)に植え替えます。
空いた畝に植えつけることもあれば、寿命を全うした親株の代わりに植え替えたり、収穫のあと、株の下のほうが茎状になって台風などで倒れてしまった株のあとに植えつけたりします。
植え替えしてから2年程して充分大きくなって外葉が開いたものを刈取り、収穫します。
徹底した無農薬栽培
野菜や果物をはじめてとした食物を食べる人にとって最も関心があることは、その食物が本当に安全かどうかです。
アロエベラはどんな栽培方法で育てられているのかたずねてみました。
農薬も必要としないアロエベラの力強さ
アロエベラ農場に生きる小虫
農薬や除草剤を使わない賜物
アロエベラはもともと害虫に強く、農薬も必要としません。だから畑にはムカデも出るし、小さな虫達が飛び跳ねています。特にクモが多くて、アロエの株はクモの巣がよく張りめぐっています。年間を通じて気温10度を下回ることがめったにないので、宮古島はアロエベラ栽培を完全な露地栽培にて実現できる数少ない場所です。また毎年多くの激しい台風に見舞われますが、他の作物と異なり、この台風にも力強く耐え忍んで生長し続けます。
アロエベラにはどんな肥料を与えているのですか?
肥料は特別なものは使っていません。鶏糞や牛糞を堆肥として与えています。
真っ赤だった赤土を
ここまでにした土壌内の有機肥料
もちろん化学肥料などは使いませんよ。そんなものを使ったら何の意味もなくなってしまいます。
前に他の地域のアロエベラを見に行ったことがあり、そこで見たアロエはすごかったですよ。大きくて1メートル以上あったんです。
それでその農家の方にどれくらいの期間栽培したのかをきいたら、なんと半年ですって。
僕たちが宮古でそれだけの大きさまで育てるには、苗付けから、少なくとも2年以上はかかるというのに。
化学肥料などを使えば、短期間に多くの収穫を得ることができるのは知っていますが、 そんなものには関心がありません。
僕らが目指しているものはそんな農業ではないですから。
アロエベラ栽培は雑草との戦い
アロエベラ畑に広がるイモの葉
雑草対策に試行錯誤を重ねる
当然ですが、アロエベラの栽培に除草剤などの薬品は一切使いません。
ですから毎日が雑草との戦いです。目を離すとすぐに背丈ほどまで草が伸びてきてしまいます。
草が茂ってしまうと、アロエベラが太く肉厚にならないのです。
日の当たらない森の奥の木のようにほそーい葉ができてしまう。
また、伸びきった草を刈ったあと、草の覆いがとれて、アロエはまるで裸になったみたいになるのですが、そこへ宮古の強い日差しが照りつけると、葉全体があかーく火焼けた状態になってしまいます。
そうなると市場に出せなくなってしまうので、やはりこまめな草刈が必要となってくるわけです。
ただ、この草刈が非常に手間のかかる作業です。多少なりとも機械で刈り取れる畑であれば良いのですが、機械が入れるスペースがないなどの場合は、全て手作業でとらなくてはならないのです。
マルチ(マルチフィルム)を畝に敷き詰めて雑草が生えてこないようにすることも考えましたが、安いマルチだと、すぐボロボロになってしまうので、比較的高価なマルチを用意する必要があります。
その上2〜3年かけて栽培するために、肥料をこまめに追加してやる必要があり、そのつどマルチを破って行わなければなりません。
また、葉を外側から刈っていくと株の下の方が細い茎のようになってしまい、安定しなくなってしまうので、土を盛って安定させてやらないといけないので、またマルチを破らなければなりません。
手間もかかるし、費用もかかってしまうので、十分有効な手立てとはいえません。
アロエベラ収穫について相談
多くの農家の方々が高齢の方ですから、草刈は非常に重労働です。
でも、80を超えた農家のおばあちゃんが、「大丈夫、楽しいよ」っていってくれるのがせめてもの救いです。
月に何度も農家の方々と酒を酌み交わしながら、この雑草の問題の解決法について話をしています。
そして様々な方法を試しつつ、アロエベラを栽培しています。
ある農家の方は、アロエベラ畑に芋を一緒に植えることで、地表につるを這わせて雑草を生やさないようにしたり、同じように豆を植えてみたりして、現在試行錯誤を重ねています。
有機JASマーク取得について
有機JASマークは数年前に20件以上の農家が取得しました。僕が運営する畑も取得しました。
しかし、JAS認定を受けたからといって、その分消費者の方に認知がうけられ、宮古島の農作物が広く普及するかというとそうではありませんでした。
雑草に包囲されたアロエベラの小苗
有機無農薬の証!
雑草もイキイキです。
また、 有機JASマークは年更新制であり、取得費用が本当に馬鹿になりません。検査員の方の旅費も含め取得にかかる費用は全て各農家が負担しなくてはなりません。
ですから年々申請、取得する農家は減り、今ではほんの数件の農家が取得しているだけです。
有機JASも、先程話しましたマルチのこともそうですが、費用がかさむと消費者の方へ提供する作物の価格に反映させなくてはならないし、農家にも潤いがなくなって寂れてしまいます。
自分達は胸を張って有機無農薬栽培を行い、品質の高い作物を提供していると自負しています。
そういう僕たちと僕たちが育て上げた作物を理解していただくことができるのならば、有機JASマークの取得はそれほど重要ではありません。
少しでも良いものを作るための工夫
アロエベラ畑の土
この中に天文学的な数の
微生物が生きている
EM(有用微生物郡)培養してアロエベラ畑に散布しています。
EMとは沖縄の琉球大学の教授が開発した、安全性が確認されている酵母菌や乳酸菌など、食品加工などに使われる微生物の集まりです。
このEMを土に混ぜることにより、土に含まれる有機物の分解を促し、その栄養分を通常よりもアロエベラに吸収させやすくすることができます。
このEMは黒蜜を1週間ほど発酵させ、水で1000倍ほどに薄めて使用します。このとき水道水を使うとカルキでEMの微生物が死んでしまうので、地下水をくみ上げて使用しています。
最近は植物だけでなく、ペットの健康のために飲み水などに混ぜて使う方もいらっしゃいます。
今後の宮古島農業について
アロエベラを含めた宮古島の島野菜を多く作っていきたいと思います。
ゴーヤや島らっきょ、ヨモギなど古島ならではの作物を多く作り、消費者の方に喜んでもらうとともに、島の農家に潤いを与え活性化できたらと思います。
観光だけでなく、農業からも更なる宮古島の発展ができたらと考えています。
アロエベラ畑の一角に島ラッキョウやヨモギなどの島野菜も栽培している